最近、「フッ素フリーの耐油紙」という言葉を耳にする機会が増えていませんか?
環境や健康への配慮から、食品包装の世界では「脱フッ素」の動きが進んでいます。
ところで「フッ素」と聞くと、多くの方がまず思い浮かべるのが歯磨き粉かもしれません。
「フッ素=虫歯予防にいいもの」なのに、なぜ食品容器では“フッ素なし”が良いのでしょうか?
この記事では、歯磨き粉のフッ素と耐油紙のフッ素の違いをはじめ、なぜフッ素フリーが推奨されているのか、その理由と背景を解説します。
そもそも「フッ素」ってなに?
「フッ素」とは、元素記号で「F」と表される天然に存在する元素のひとつです。単体では非常に反応性が高いため、自然界ではさまざまな化合物の形で存在しています。
この「フッ素化合物」は、用途によってさまざまな形に加工されており、歯磨き粉、フライパン、食品包装紙、衣料品、コスメなど、私たちの生活のあらゆる場面で使われています。
歯磨き粉に含まれる「フッ素」とは?

歯磨き粉に使われるのは「フッ化ナトリウム(NaF)」や「モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)」などの水溶性フッ素化合物です。これらは以下のような理由で使われています。
・歯のエナメル質を強くする
・虫歯菌が出す酸に対する抵抗力を高める
・再石灰化を促す
そのため、適切な濃度で使用すれば、人体にとって有益な働きをしてくれます。日本でも歯科医師や厚生労働省が虫歯予防のためにフッ素入り歯磨き粉の使用を推奨しています。
ただし、大量に摂取すれば中毒のリスクもあるため、年齢ごとの適量が設定されており、誤飲には注意が必要です。
耐油紙に使われてきた「フッ素」は?

食品を包む紙や容器に使われる「フッ素化合物」は、PFCs(パーフルオロ化合物)やPFAS(ピーファス)類と呼ばれるものです。
これらは主に以下3つのような特性を持っています。
・油や水をはじく(撥水・撥油性)
・耐熱性が高い
・加工しやすく安定性がある
このような性質から、油物のテイクアウト容器、フライドポテトの包装紙、バーガー用ラップなどに長年使用されてきました。
しかしこのフッ素化合物、実は「分解されにくい化学物質(永遠の化学物質)」として、近年世界中で問題視されているのです。
フッ素化合物(PFAS)による問題とは?
PFAS(ピーファス)は、「有機フッ素化合物の総称」で、自然界で分解されにくく、長期間残留しやすいという特徴があります。
これが人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されるようになりました。
主な懸念点を3つ挙げます。
① 環境中での残留性 | PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、自然界ではほとんど分解されません。河川、土壌、大気などに広がり、長期間分解されずに残留。 |
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② 生体内蓄積性 | 一部のPFASは、体内に取り込まれると分解されにくく、蓄積されていく。 |
③ 健康への影響の可能性 | 動物実験では、肝機能障害、免疫系への影響、発がん性などが報告されており、人間への影響も懸念されています。 |
こうした背景から、EUやアメリカなどでは一部のPFASについて規制強化が進んでおり、日本国内でも企業や自治体による自主的な対策が始まっています。
なぜ「フッ素フリーの耐油紙」が注目されているのか?
従来の耐油紙は、加工時にフッ素化合物を使用することで高い耐油性を持たせてきました。しかしPFAS規制の流れを受け、フッ素を使用しない新たな技術の開発が進められています。
以下、フッ素フリーのメリットを挙げてみます。
① 環境にやさしい | 使用後の紙が土に還りやすく、自然分解されやすい。 |
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② 人体への不安が少ない | 食品と直接触れる容器として、安全性が高まる。 |
③ 企業の社会的責任(CSR)を果たす製品づくり | 環境配慮を重視する消費者の支持を得やすい。 |
世界中でフッ素化合物に対する規制の動きが急加速しています。
このような背景から、フッ素を使わない耐油紙=フッ素フリー耐油紙は、持続可能な社会に向けた新たな選択肢として、世界の多くの企業やブランドが導入を進めています。
フッ素フリーの耐油紙は未来のスタンダード
歯磨き粉に使われる「フッ素」と、食品容器に使われる「フッ素」は全く別のものです。歯磨き粉のフッ素は適切に使えば虫歯予防に有効ですが、食品包装に使われるフッ素化合物には環境や健康への影響が懸念されています。
そのため、包装業界では「フッ素フリー」の製品開発が急速に進んでおり、環境配慮型の耐油紙が注目を集めています。
これからの時代、私たちが商品を選ぶ基準には「安全性」や「環境へのやさしさ」も含まれます。フッ素フリーの耐油紙は、そんな未来志向の暮らしにぴったりの素材と言えるでしょう。
開発途中でまだまだ数は少ないですが、木村容器ではフッ素フリーの耐油袋のご紹介が可能です。
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